Webが新しい建築・行動をつくる -書店編-
私がよく行く蔦屋書店は、売場面積が日本最大の店舗(2011年8月時点)で、蔵書は60万点。書籍を購入する際にはよく利用させてもらっています。
AmazonやKindleのお世話になることが増えたとはいえ、「中身を確認したい」「書籍として手元に置きたい」という欲求はあります。
学生の頃は本屋を数件ハシゴし、お目当ての本を一日探しまわったものですが、現在では、TSUTAYAアプリを利用して在庫を確認するだけで、無駄足を踏むこともなくなりました。
しかし巨大書店ならではの問題点は、店内で自分が欲しい書籍の位置がわかりにくいことです。なにせ日本最大級の売場面積1737坪(ちなみにSHIBUYA TSUTAYAは1030坪らしい)ですから簡単には見つかりません。
もちろん書店の端末で検索しますが、スマホやキーボード入力に慣れてしまっているせいか、あかさたな50音順の表記に四苦八苦。ようやく検索して表示された本棚の場所を端末からプリントアウト。蔦屋書店ではありませんが、印刷しようとしたら用紙切れ…なんて経験はないでしょうか?
書籍名をスマホに入力して、端末に入力して、印刷して、印刷された地図をクルクル回して(方向音痴です)… TSUTAYAアプリで在庫検索もできるのだから、現在位置もアプリに表示してもらえないだろか?と思うのですが…
カーナビならぬブックナビ。といったところでしょうか。
現在、代官山 蔦屋書店や武雄市図書館などではRFIDを利用した蔵書管理を行っているそうです。
技術的には不可能ではない気がしますよね?
さて、ここからが本題です。
RFIDとスマホで、書店・図書館のカタチは変わるのか?
蔵書の管理方法が変われば、書店は一つの建物にまとめる必要がなくなります。
例えば、シャッター街になってしまった地方中心市街地の空き店舗をそれぞれのコーナーにする。元洋品店は主婦向けの雑誌やレシピ本など、元自転車屋さんはアウトドア・スポーツ関連、元酒屋さんはビジネス関連など。会計はどこのお店でも可能。カフェに持ち込んで読むことも、街中を巡って最後のお店で清算も。
書店の在り方が変わり、人の行動が変わり、街も変わる。
そんなことを1995年、携帯電話もメールもごく一部の人しか利用していなかった時代に提案した建築家がいました。
1995年せんだいメディアテーク コンペ 2等案:古谷誠章さん
http://www.tozai-as.or.jp/mytech/04/04_furuya04.html
20年前には不可能と判断された古谷さんの案は、現在、RFIDによって書店や公共施設である図書館の在り方も変えることになります。
情報を手のひらに持ち歩く
スマホ登場以前、Webが人間の行動に与える影響は少なかったと思います。
Webサイトはデスクトップで閲覧するもので、行動する際にはあらかじめプリントアウトした紙を持ったり、メモしたりして、行動を予定していました。
でも、欲しい情報をその場で検索できる現在では、Web上の情報によってその場で人の行動が決められるようになります。
アフォーダンスの様な緩い示唆ではなく、道路標識や案内板の様な意思を伴う強い方向性を持った表示です。
買い物の際には、駅前や目抜き通り沿いの店舗に集まっていましたが、スマホという新しい標識で、今までは見向きもされなかった立地でもお客さんを呼び込むことが可能になるかもしれません。
「スマホありきの行動になってしまうのでは?」という意見もあるかもしれませんが、個人的には、強制的な抑圧がされるとは思いません。
今まで見えづらかった魅力が多くの人に届くようになると思いますし、あえて検索情報として見せないという戦略も生まれると思います。
さらに人は個人で動くとは限りません。友人と行動もしますし、他者の行動を見て、自分の行動も変化させます。
情報がよりリアルタイムに人の行動に影響を与えるようになる時、デバイスは携帯電話型なのか、眼鏡型なのか、時計型なのか。
情報と空間の関係性もより成熟したものになるでしょう。
UHF帯RFIDタグ約80万枚を用いた精緻な販売・在庫管理を実現
~本事例の標準システムを販売強化~(2011年11月8日): プレスリリース | NEC
http://www.nec.co.jp/press/ja/1111/0803.html
カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社様 : 事例紹介 | NEC
http://www.nec.co.jp/library/jirei/ccc2/contents.html
筆者について
- 斉藤 徹
- @_ebaw
Webディレクション/UIデザイン/IA。 企業サイト・採用サイトを中心に制作、企業の広報業務のお手伝いをしています。 学生時代は建築計画/環境行動学/子どもの環境行動/学校建築。 Webと環境行動をテーマに模索中。